金融文学「お前のせいだぞ！」「印鑑は銀行員の命！」豊洲銀行網走支店先生の短編２作品 -

投稿日 2022年9月6日 | 最終更新 2023年4月11日

豊洲銀行網走支店@toyosubk88
「あぁん、もうムリぃ…これ以上はダメ…」ため息と苦痛の声が漏れた。後輩の伝票記載ミス、再鑑の私も見逃した。再発防止策に頭を悩ませ悶絶している。これ以上は確認者を増やせない。単に人を増やすだけの再発防止はダメ、本部の通達が出ている。SNSで現場猫が啓蒙したおかげだろうか。憎らしい。
2022/07/11 11:23:28

チェックリスト作成、これも主任に却下された。めくら判を押すような人間はどうせ『〇〇さんがやったから大丈夫』と確認せずチェックをつけるし、真面目にやる人にとっては非効率極まりない。システムやツールによる自動化、効率化でプロセスのリスクそのものを減らすしかなさそうだ。
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この場合、事務部門の管理フレームワークに加え、情シス部門向け資料提出、定例会議の場で進捗報告が求められる。似たような再発防止対応で社内SEのスケジュールは数ヶ月先までいっぱいだそう。さらに長期フォロー案件としての報告も必要だ。「どうして…」情シス担当者との電話中に心の声が漏れた。
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私たちは仕方なく折衷案を立てた。最終的にツールで効率化、ツール完成までの期間限定で再鑑後の追加チェック。主任から一旦OKが出た。

帰りの駅の改札、あるガチャガチャが目に入る。能天気な顔でヨシッと叫ぶ猫がいた。「お前のせいだぞ！」あまりに憎らしいので3匹ほど連れて帰ることにした。
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おしまい
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印鑑がない！お客さまをが待ってるのに…必死に辺りを探す。「豊洲さん、来なさい」主任が引出しから黒い筒を取り出す。私の印鑑だ！「印鑑は銀行員の命！離席時は引出しに保管して施錠！基本動作ッ！！」また主任の印鑑隠し？今年はあの子ね。ざわつく一同。悔しさと恥ずかしさで顔を真っ赤にした。
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別の日、本人確認のためにコピー機のフィーダーを使ってお客さまの住民票をコピーしていた。それを見た主任は私が回覧した書類を目の前でぐしゃりと丸めた。「大事な書類がこうなったら嫌でしょう。もし紙が詰まったらお客さまに同じ思いをさせていたのよ！」とご指導いただいた。書類は作り直した。
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業務日誌、「貴職は自身のプライドの高さを顧みること。お客『さま』です！」のコメント。入行前は短期バイトしかしていない。日報など書いたこともない。「お客に『さま』をつけるよう指導されたことがないのですが…」軽く抗議を試みた。「あんたのそういうところがダメなの！」倍返しを食らった。
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主任には多くのご指導をいただいた。今では全てが良い思い出だ。パワハラの基準が厳しい今、本気で指導してくれる人は多くない。私も後輩と真摯に向き合って指導できるようになりたい。強い思いを胸に、私は後輩の印鑑を自分の引出しにしまった。慌てふためく後輩の姿を微笑ましく思った。

おしまい
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