投稿日 2022年12月5日 | 最終更新 2023年4月11日
麻布競馬場@63cities「ねぇ、彼女にクリスマスプレゼントをあげたいんだけど何がいいと思う?ずっと持っててくれるものがいいから、そうだな、お財布とかにしようと思うんだけど」
2022/12/04 10:51:47
麻布競馬場@63cities「お財布て(笑)相手はいい歳した社会人なんだからそれなりのお値段のお財布をもう持ってるに決まってるでしょ(笑)それを捨てさせてブランドなんてロクに知らない僕ちゃんが素晴らし〜いセンスで選んだお財布を持たせて会社の同僚から『あの人センスな〜い(笑)』って笑われるようにしたいわけ?」
2022/12/04 10:54:48
「そしたらどうだ、名刺入れとかは?なんかミッドタウンに高そうなブランド入ってるじゃん」
— 麻布競馬場 (@63cities) December 4, 2022
「お前は話聞いてないの?(笑)財布ならダメで名刺入れならいいとかじゃなくて、『ひとつしか持たないもの』『それで社会人としてのレベルが測られかねないもの』はお前ごときがお前ごときのセンスで押し付けるべきじゃないって言ってんの(笑)そういうのは藤原ヒロシでもやっちゃダメなの(笑)」
— 麻布競馬場 (@63cities) December 4, 2022
「そしたらどうだ、今度は何個持っててもいいもので、例えばアクセサリー、例えばピアスとか」
— 麻布競馬場 (@63cities) December 4, 2022
「ピアスて(笑)お前どうせ彼女がいつも使ってるのがピアスなのかイヤリングなのか知らないでしょ(笑)相手が普段どんなもの使ってるか見てないようなやつが選ぶものなんてどうせ相手のセンスに合わないよ(笑)なら無難なやつ?女の子がそうやって無難なやつをいくつ貰ってきたと思ってんの(笑)」
— 麻布競馬場 (@63cities) December 4, 2022
「うるさいなぁ、そしたら物はやめだ、そうだな、食事とかは?普段は行けない高いレストランに連れてってやるんだ」
— 麻布競馬場 (@63cities) December 4, 2022
「レストランねぇ(笑)一斉スタートのクリスマスディナーじゃロクなサービスも受けられないし二度と再訪しない連中向けの割高料金吹っ掛けられるだけだって(笑)普段は行けないお店て(笑)そういうとこに背伸びして行って一番安いグラスシャンパン頼むほどみじめなものはないよ(笑)」
— 麻布競馬場 (@63cities) December 4, 2022
「うるさいなぁ、そしたらレストランはやめて、どうだ、旅行なんてのはどうだ。温泉旅館とかはどうだ」
— 麻布競馬場 (@63cities) December 4, 2022
「いますぐ一休開いてみなよ(笑)まともな旅館は秋のうちにもう満室になってて湯河原あたりの不倫旅行専用のギンギンの旅館しか残ってないよ(笑)」不倫セックスの飛沫が壁やら床やらに染み込んだ部屋で『メリークリスマス』なんて乾杯するのかい?(笑)そんな滑稽なことないよ(笑)」
— 麻布競馬場 (@63cities) December 4, 2022
「文句ばっかり言いやがってよ。なら何買えばいいっていうんだよ。お前は何買うんだよ。言ってみろよ。おい」
— 麻布競馬場 (@63cities) December 4, 2022
「普段やらないのにクリスマスだからってだけの理由で惰性で何か買おうとしてるのがまず間違いなんだよ(笑)普段から相手のことを考えて、あげたら喜びそうなものを物を考えて、何てことのない日に買ってあげることをしてきてれば迷わないはずだよ(笑)まず自分の日頃の怠惰を呪ってほしいよ(笑)」
— 麻布競馬場 (@63cities) December 4, 2022
紀伊国屋にでも寄って帰るかと新宿の伊勢丹あたりを通ったら、あいつみたいな連中が財布を握りしめて不安そうにキョロキョロ歩いていた。あいつみたいにプレゼントに悩んでいるんだろう。あいつがあの子とクリスマスを過ごすのを想像する。センスはなくとも幸せがそこに余るほどにあるのを想像する。
— 麻布競馬場 (@63cities) December 4, 2022
あいつと、あいつの彼女と、それから僕は律法会の新歓で知り合って、結局それぞれ違うサークルに入ったけど関係は続いて、元住吉のあいつのひとり暮らしの家で三人でよく宅飲みした。そのうちあの子のことが気になるようになって、渋谷や横浜で、あいつに秘密でこっそりデートをするようになった。
— 麻布競馬場 (@63cities) December 4, 2022
クリスマスデートを取り付けた!おれは緊張した。クリスマスデートなんて初めてだった。メンズノンノやポパイを熱心に読んで女の子が喜ぶプレゼントやデートプランを勉強した。結局ピアスにした。三越伊勢丹の一階をぐるりと回って値段に驚いた。オープンハートなんて一万くらいで買えると思っていた。
— 麻布競馬場 (@63cities) December 4, 2022
予算オーバーだったがどこかのブランドでピアスを買った。どんなのがお好きですか、と店員に聞かれてまごまごしてやら、コチラはシンプルなデザインですからどなたでも、何歳になってもお使いになれますよと言われて即決した。何歳になってもそのピアスが彼女の耳で揺れるのを見ていたいと思った。
— 麻布競馬場 (@63cities) December 4, 2022
彼女の耳たぶにピアスホールは空いていなかった。大丈夫だよ、嬉しいよ、と彼女は笑ってくれた。そこは横浜のほぼラブホみたいなビジホだった。ネットで必死に選んだ部屋だった。レストランもひどかった。混みすぎててサービスが回っていなかった。僕らが頼んだ一番安いシャンパンは永遠に来なかった。
— 麻布競馬場 (@63cities) December 4, 2022
それから彼女に何かするのが怖くなった。彼女のことを知らなければと思った。でも出会って数ヶ月の相手のことなんて知ろうとしても知れるはずがなかった。僕はLINEを送るのさえ怖くなった。彼女からすれば急に冷たくなったように見えたんだろう。自然消滅みたいに、曖昧な関係は曖昧なうちに終わった。
— 麻布競馬場 (@63cities) December 4, 2022
結局ぼくは、相手がどう思うかじゃなくて、自分がどう思われるか、ダサいやつだって思われないか、そんなことばかり考えて、でもダサさから距離を取れるほどのセンスはなくて、結局自分では何もできなくて、雑誌を漁って獲得した受け売りの知識で批評家気取って文句ばかり言う人間になってしまった。
— 麻布競馬場 (@63cities) December 4, 2022
久しぶりに三人で飲みに行こうよ、とあいつからLINEが来たのは今年の春のことで、指定された銀座のスペイン料理やさんにノコノコ出向いたら二人が付き合い始めたという話を聞かされた。へーそうなんだ(笑)僕は平静を装いながら冷めた小海老のアヒージョをつついた。彼女の顔は見られなかった。
— 麻布競馬場 (@63cities) December 4, 2022
あいつは知ってか知らずか、僕にあれこれアドバイスを求めた。最初のうちは丁寧に対応していたが次第に腹が立ってきた。別にそれはあの子のためでは決してなかったけど、僕はあれから必死で勉強して、神泉のオシャレ立ち飲み屋でオシャレ談義をしても浮かないオシャレな人間になった。だがあいつは?
— 麻布競馬場 (@63cities) December 4, 2022
好きな女の子に喜んでもらうにはどうすればいいか必死で悩んで、たまには失敗もして、そうして相手のことを知ってゆくべきじゃないのか?アラサー越えてきたあたりで急に独身でいるのが不安になって、それで近くにいた独身同士が適当に二人組を作って、そこで適当に幸せごっこをしてるだけじゃいのか?
— 麻布競馬場 (@63cities) December 4, 2022
年が明けたら同棲すると言っていた。神楽坂のあたりと言っていたがどうせ江戸川橋だろう。どうせ遊びに来いと言われるだろうからセンスのいい手土産でも持っていってやろう。何かの拍子にアクセサリーの陳列棚みたいなのが目に入ったら、僕があげたあのピアスがないか、絶対に探さないようにしよう。
— 麻布競馬場 (@63cities) December 4, 2022
おしまい クリスマスプレゼントに麻布競馬場の本を贈ろう!https://t.co/6BW5ntAFyg
— 麻布競馬場 (@63cities) December 4, 2022
どんな変なものもらっても、その変なものを頑張って選んでくれた人を可愛いって思えたら何年経っても笑顔で思い出せる幸せの象徴になるんだよ。
— db (@dewberryleft) December 4, 2022
これからは4℃のネックレスでいいんだよ。
— sky blue (@kittenoper) December 4, 2022
なんてったって愛子さまも御用達だからな!