投稿日 2023年2月1日 | 最終更新 2023年4月11日
かとうゆうか@plasticat_y結婚した友達と出産した友達のSNSを全てブロックしても心の平穏は訪れなかった。幼い頃から「パパのような人と結婚して子供をたくさん産みなさい」と言われて育った私は10代のうちから結婚願望は強かった。しかし今年で34歳になる今も独身のまま白金高輪の実家に住んでいる。
2023/02/01 10:48:59
青山学院大学で出会った彼氏とは3年間交際した。彼は両親を紹介してくれて一緒に北京ダックを食べたりその帰り道に伊勢丹でスイーツを買ったりした。しかし母は彼の家族と親交を深めるほど「早く別れなさい」「どこで食事をしたの?あんな治安の悪い街に行ったの?」と事あるごとに彼らを責め立てた。
— かとうゆうか (@plasticat_y) February 1, 2023
彼の父は中小企業の役員で彼の母は派遣のコンシェルジュ。私の母曰く「うちとは釣り合わない家」だった。母の実家は祖父の代から病院経営をしていて、父も兄も医者だった。「医者か大手に勤務していないと人に言えないから結婚させられない」。専業主婦の母のその言葉が人生の大きな重圧となった。
— かとうゆうか (@plasticat_y) February 1, 2023
無名のベンチャー企業に就職した彼氏と別れIT関係の広報として働き始めた私はとにかく忙しかった。そんな私を見て「子供にミルクをあげる方が幸せよ」と母は言った。一体いつの時代の話をしているのかとは思うものの、幼い頃から刷り込まれた"女の幸せは結婚と出産"という呪いからは逃げられなかった。
— かとうゆうか (@plasticat_y) February 1, 2023
20代のうちに医者か誰もが一目置く大手企業の男性との出会いはなく、30歳を機にマッチングアプリに登録した。 Tinderはヤリモクばかりで東カレでは若い美女に勝てないことに打ちのめされ、Withでパッとしないが年収の高い男たちと『面接』をする毎日が始まった。
— かとうゆうか (@plasticat_y) February 1, 2023
それは繰り返される同じような会話と特別美人ではない私に興味がないと分かる男の瞳に肩を落とす日々だった。「妥協しちゃだめよ、ママのお友達の櫻井さんの娘さんは最近35歳で結婚したのよ」という母からのエールを受けた後、男ウケしか考えてない自分のベージュの爪をふと見やり視界が涙で滲んだ。
— かとうゆうか (@plasticat_y) February 1, 2023
六本木のバーで飲みながら上司の愚痴を言い合った戦友も、3ヶ月に1度は集まっていた青学の同期も、仕事を辞めて家事手伝いと謳いニートになった友達でさえ結婚した。彼女たちは夫が家事をしないと愚痴った後に記念日を祝ったレストランの話を始め、これが目に入らぬかとばかりに子供の写真を掲げた。
— かとうゆうか (@plasticat_y) February 1, 2023
子供の公園デビューの時期を相談されたときには思わず吹き出してしまった。聞く相手間違ってるだろ、知らねぇよ。ハッとした。私はなんてことを友達に思ったのだろう。最低だ、死にたい、このままではどんどん心が荒んでゆく。私は独身の友人だけを残し、既婚者の友人を一人残らずブロックした。
— かとうゆうか (@plasticat_y) February 1, 2023
着飾った赤子や強羅花壇で夫と寛ぐ友人の写真を見ていると劣等感で自殺してしまうかもしれないと本気で危機を感じた。婚活の初回アポでケンタッキーの食べ放題に連れて行かれた日は舐められたものだと怒りが収まらず、楽しく飲んでも会計時に「5000円もらっていい?」と言われた日は悔し涙を流した。
— かとうゆうか (@plasticat_y) February 1, 2023
婚活を続けても医者や有名企業の男性は私を選ばない。何とか交際まで辿り着けた伊藤忠の男性には「駐在することになっても子供ができてもダブルインカムでいいから結婚して」と必死にプレゼンしながら縋りつき振られた。日に日に市場価値が落ちている自覚はあるが、相手に求める条件は下げられない。
— かとうゆうか (@plasticat_y) February 1, 2023
ふと大学時代の彼の名前をググるとベンチャーから独立しPR事業や配信アプリの運営会社を立ち上げ成功者となっていた。Instagramを開くと若い妻とリッツカールトンのTHE BARでデートを楽しむ様子や3歳になるという息子と親子コーデまで楽しんでいた。激しい後悔で歯の奥がカチカチと鳴った。
— かとうゆうか (@plasticat_y) February 1, 2023
ブロックした彼女たちことは結婚するまで解除できない。連絡ができるようになるまでこの地獄は続くだろう。それまで品定めされ続け日に日に市場価値が落ちてゆく。妻に相応しくないという烙印を押され惨めになる傷も増え続けるだろう。この終わりの見えない地獄に、みっともないほど身震いした。(完)
— かとうゆうか (@plasticat_y) February 1, 2023
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— かとうゆうか (@plasticat_y) February 1, 2023