投稿日 2022年6月7日 | 最終更新 2023年4月11日
麻布競馬場@63cities久しぶりです。標準語でびっくりすると思います。何となく恥ずかしいから、留守電にしますね。謝りたいんです。君の苦しみを、東京の苦しみを、ずっと分かったふりをして、馬鹿にしていたんです。東京に行って、東京で傷付いて、やっと分かったんです。君はまだ、東京で元気にやっていますか。
2022/04/23 13:40:01
上新庄生まれ上新庄育ち。十三の公立高校から豊中の国立大学へ、そして人材系の会社の大阪支社へ。ロクに大阪を出たこともありませんでした。実家のたこ焼きはこんにゃくとチーズ入り。好きなテレビは新喜劇にナイトスクープ。M-1は録画して何度も見ました。大阪人らしい大阪人だと自負しています。
— 麻布競馬場 (@63cities) April 23, 2022
東京は冷たい街や、と思いました。君が僕にとっての、初めての身近な東京もんでした。標準語を話すのを見て「芸能人やん」とツッコんで無視されました。宿泊研修やその他様々でも何か話しかけた気がしますが、いつも嫌そうな顔で躱されました。君は僕を、大阪という街を拒んでいるようでした。
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東京、というのは、僕たちにとってテレビの中の世界でした。別に劣等感を覚えるような存在ではありませんでした。大阪に残ることが当たり前で、東京の大学や会社に行く人には、何か特別な理由があるのだと、あるいは単にこのすばらしい大阪に馴染めなかったんだろうと、かわいそうに思っていました。
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せっかく大阪に来た君が、そうなってしまうことがかわいそうだと思ったのかもしれません。君の大阪に対する見下しを感じたのかもしれません。でも、多分、ただ単に、君を助けたかったんだと思います。僕たち大阪人の心の中には、知らん人に飴ちゃんをくれるおばちゃんが、確実に住んでいるのです。
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君を漫才に誘いました。君はもちろん嫌がりました。でも粘りに粘って、どうにか台本を書かせることに成功しました。その台本が素晴らしかったのです。これは勝てる、と思いましたし、これを君がやることに意義があると思いました。結果君はステージに立って、結果君はみんなの称賛を浴びました。
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「おもろい」と言われて育ちました。君は台本の打ち合わせで「君たちは0.1%の天才の真似を大声でして、何となくお互い笑っているだけ」と言いました。偉そうやな、でも確かにそうやな、と思いました。ステージで大爆笑を浴びながら、僕は僕の人格の核になっていた「おもろい」が揺らぐのを感じました。
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僕は大阪に残りました。豊中の国立大学で、僕は迷わずお笑い研究会に入りました。高学歴でおもろいなんて最強でしょう。でも僕の自信は音を立てて崩れました。「クラスの人気者が声張ってるだけのツッコミ」毎回そう言われました。あの日の爆笑すらも、100%君の台本のおかげだったのです。
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賞レースになんて引っかかることもなく、せいぜい学園祭の小さなステージで身内の中笑いをいくつか取っただけで、僕のお笑いへの挑戦は終わりました。やはり大阪に残りたくて、人材大手の会社に入って梅田支社勤務を希望して、実際に四年ほど大阪で働きました。部署もお客さんも大阪の人ばかりでした。
— 麻布競馬場 (@63cities) April 23, 2022
賞レースになんて引っかかることもなく、せいぜい学園祭の小さなステージで身内の中笑いをいくつか取っただけで、僕のお笑いへの挑戦は終わりました。やはり大阪に残りたくて、人材大手の会社に入って梅田支社勤務を希望して、実際に四年ほど大阪で働きました。部署もお客さんも大阪の人ばかりでした。
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そうして、東京本社への異動を命じられたのです。初めての東京です。大阪では求人広告の営業をやっていて、「おもろいなぁ」と中小企業のオーナー社長たちから可愛がってもらって、成績もそこそこ良かったのです。きっと東京でもやっていける。僕は東京でも通用する。僕には自信があったのです。
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お笑いがそうであったように、僕の有能さに対する自信も、あっという間に崩れてゆきました。大阪では見たことないような優秀な人がたくさんいました。会社を辞めて起業して、会社を売って、タワマンや外車を買う後輩もいました。大阪のエリートだったはずの僕は、東京の落ちこぼれになっていました。
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東京に長くいると、自分より有能な人、お金を稼いでいる人の存在がいくらでも見えてきます。外銀、外コン、医者、起業。大阪にも「かねも」はいましたが、彼らの大半は親の土地や会社を引き継いだ人でした。東京の彼らはまさしく第一世代の成功者で、自分の努力で、才覚で、成功を勝ち取ったのです。
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そんな彼らを見ながら、成績未達で上司に日々詰められるのはどんな気持ちだと思いますか?ただ道を歩くだけで、六本木の高級ステーキ屋さんから出てくる半ズボンの大学生みたいな若者たちを見てしまい、そこに辿り着けない自分の無能を自覚し、自分を責めてしまうのです。いつも惨めな気持ちでした。
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大阪にはマウンティングの文化がないと言う人がいます。確かに自虐のほうが笑いが取れるし、笑いが最も重んじられます。でも、もしかすると、大阪には「自分の力で圧倒的に成功した人」が少なかったのかもしれません。マウンティングとは、何かを見て勝手に自分が惨めに感じる心の動きなのですから。
— 麻布競馬場 (@63cities) April 23, 2022
「未達のくせに明るくていいなぁ」パワハラ気味の上司とは馬が合いませんでした。未達の原因のひとつが大阪弁ではないかと、理屈のない批判を執拗に投げかけてきました。最初は抵抗していましたが、それでも反論としての成績は伸びず、僕は下手な標準語を話し始めました。心は麻痺してゆきました。
— 麻布競馬場 (@63cities) April 23, 2022
結局、二年も経たずに大阪支社に戻りました。正確には東京本社を追い出されました。一年ほどで休みがちになり、そうなると成績は更に下がり、もはや僕に居場所はありませんでした。大阪に戻ってからも、愛する地元は何だか昔とは違うふうに見えました。馴れ合いの湿度の中でふやけ、淀んでゆく街。
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もしかすると君の目には、最初から大阪がそんなふうに映っていたのかなと、そんなことを思ったのです。人には人の苦しみがあるように、その街にはその街にしかない苦しみがあるのかもしれない。もしかすると、東京から来た君は、この街で、君にしか見えない苦しみを抱えていたのかもしれない。
— 麻布競馬場 (@63cities) April 23, 2022
東京に戻った君は、いまどんなふうに過ごしていますか?それでもやっぱり僕は、地元が好きです。家族がいて、友達がいて、福島や天満に行けばナチュールワインなんかを出す気の利いた飲み屋もあって。君は好きになれなかったかもしれないけど、僕はこの街で、これからも生きていこうと思っています。
— 麻布競馬場 (@63cities) April 23, 2022
君が賞を取ったラジオCMのクライアント、実はうちの会社なんです。社内報で久々に君の名前を久々に見て驚きました。お笑いやっててくれたら嬉しかったけどね。それで、今日酔っ払ったついでに、深夜の誰もいない中之島の遊歩道で、ふと君に電話してみたんです。話し中だったけどね。
— 麻布競馬場 (@63cities) April 23, 2022
どうしていいか分からないけど、もう少し、頑張ってみようと思うんです。恥ずかしいから折返しは不要です。今日、東京では桜が咲いたそうですね。君も、どうかお元気で。
— 麻布競馬場 (@63cities) April 23, 2022
ということでまた #PR でした 大阪朝日放送の深夜帯新番組です 明日放送の第二夜は令和喜多みな実野村尚平さんと「来世ではちゃんとします」のいつまちゃんが「愛とセックス」について語り倒します TVerで初回放送分も観てネhttps://t.co/BaKjnpOay1
— 麻布競馬場 (@63cities) April 23, 2022
PRとはいえ文章上手やし、短い文で伝える力と想像させる力がすごい。 https://t.co/e4IUMHlokN
— shige_taro🏳️🌈 (@Russhige_taro) April 23, 2022
東京人にとっての大阪と、大阪人にとっての東京がこうも馴染みにくいのであれば、埼玉千葉神奈川人ってどうすりゃいいんだろね。 https://t.co/poeV5OUhCX
— ママ鉄きの子🍄子鉄🚄コスメボックス🎁株主優待(乗車証) (@mamatetsukinoko) April 25, 2022
この話対になってるやつも含めてすごい好き https://t.co/sYGEaFiHeN
— 閃 (@kirahika25) April 23, 2022
まさかのside B https://t.co/h753BHgTjj
— た っ く ん (@CIWS_gt) April 23, 2022
これ読んだ後でもう一度先週の東京出身くんバージョン読んだら切なさが増して泣きそうになった https://t.co/37quBRClpM
— melia🐞®︎ 1y (@KZOEiEpcqLr6mAJ) April 23, 2022
このお話の友人からの視点でのストーリーはこちら↓
ツイッター文学「謝りたいんです。君を、大阪という街を誤解して、勝手に嫌っていたこと。」麻布先生の大阪物語https://t.co/2Fxirj8ZEe
— 日刊経済ツイ信(経済ツイートまとめ) (@nittsui) June 6, 2022