投稿日 2023年11月5日 | 最終更新 2023年11月5日
「ママァー!行きたくない!会社行きたくないよママァー!!」トイレで用を足しながら絶叫する。最近の平日朝のルーティンだ。私の母親は実家に住んでいるし、妻がいるわけでもない。なんでも許してくれる優しい存在の記号として、『ママ』という言葉にすがっているだけだ。#陰湿金融文学
— 豊洲銀行 網走支店 (@toyosubk88) November 5, 2023
偶然だった。毎期とんでもない業績を叩き出し、無双していたエースの先輩。仕事の報酬は仕事とばかりに給料は上げず、負荷だけ上げ続ける会社に愛想を尽かして退職した。独立系FPになったらしい。その先輩が手掛けていた大型案件を引き継ぎ、社内表彰なんてされてしまったのが不幸の始まりだった。
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これまで目標という名のノルマを一度も達成したことはなかった。大口先を任されて勝手に数字が上がる。初めての代理昇進査定はストレートで通過したがなんの手応えもない。上司や本部のサポートでうまく行っていたに過ぎない。糸の切れた凧みたいに風に流されて飛んでいる、そんな感覚しかなかった。
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次々と間違いが重なり、遂にはエリートだらけの本店営業部に配属された。「支店長から聞いてるよ。いきなり大口先を任されたのにいつも涼しい顔で目標突き抜けてくってさ。」その言葉に愛想笑いを返す余裕もなかった私を「実にクールで頼もしい!」とダメ押しでおだてる部長の笑顔に冷や汗が噴き出た。
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私のメッキはすぐに剥がれた。支店ではいつだって案件が向こうからやってきた。主要先ともなれば本部の全面サポートに加えて役員がトップセールスを仕掛けてくれる。事業戦略やら財務戦略やらをこねくり回し、勝手に自分達に都合の良いストーリーを作ってニーズを捻り出す営業なんてやったことがない。
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「おまえさあ、いつも『出来ない報告』しかしてこないけどやる気あんの?」「あ、あります。」「ほんとに?ほんとにやる気ある?じゃ、なんで数字が出来ないの?おかしいよね、やる気あるのにさあ。おまえの『やる気』って一体なに?ねえ、教えて?なんか言えよ?黙ってねえでなんか言ってみろよ!」
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パーンッ!閻魔大王みたいな顔の次長が笏の代わりに手にした進捗会議資料で机を叩く。破裂音が過ぎ去ったあと私の耳に届いてくるのは哀れみの声ではなく、せせら笑いや嘲りの言葉だった。前評判がバカみたいに良かったせいで私はフリーフォールみたいな加速度で落ちぶれていく。期待は嘲笑に変わった。
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「ママァー!行きたくない!会社行きたくないよママァー!!」トイレでひとしきり叫び、泣きながら着替えて靴を履き、駅に辿り着く頃には涙が渇く。電車の中、無心で目を瞑っていられる時間がとても尊い。とにかく会社に行って無事に帰ってくる。給料をもらうことに言い訳が出来る程度の仕事をする。
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周りのエリートみたいに経営目線を持つとか、更なる高みを目指しながら働くなんてとても出来ない。「おまえ、毎日会社来れてるのすげえな。どんだけストレス耐性あるんだよ(笑)」何を言っているんだ?私のメンタルはとっくに壊れている。これ以上壊れようがないだけだ。毎日腹の中で泣き叫んでいる。
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もしかしたら、退職した先輩も一人歩きする評価に追い込まれていたのかもしれない。ただ、私は彼のような決断が出来なかった。そして今も決断することが出来ず、ズタズタになった精神をズルズルと引きずりながら、それでも働き続けるメンタルゾンビになってしまった。
— 豊洲銀行 網走支店 (@toyosubk88) November 5, 2023
おしまい🌸