投稿日 2022年6月2日 | 最終更新 2023年4月11日
窓際三等兵@nekogal21「眞子様と小室さん、このカフェよく来るらしいよ」思わず周囲を見回すが、店内に日本人らしき客はいない。「噂だってば、噂」エミがケラケラ笑う。田舎者みたいな行動をとってしまい、耳まで真っ赤になる。ここはマンハッタン。NY駐妻エミの本拠… https://t.co/FPPtj4QBeB
2022/05/25 12:40:54
平静を装ってメニューを開くが、値段に目が飛び出そうになる。「最近のアメリカはインフレが凄くてさ。メキシコは物価安くて暮らしやすそう」NY駐妻の余裕を漂わせながら、こちらの心を見透かしたようにエミが話しかけてくる。1mmたりとも羨ましいと思っていないことだけは、はっきりと伝わってくる。
— 窓際三等兵 (@nekogal21) May 25, 2022
「メキシコシティって標高2200メートルだっけ?そういえば東京でもタワマン高層階に住んでたよね、やっぱ高い所で炊いた米って硬いの?」エミが畳み掛けてくる。勝利を確信した微笑み。悔しいことに、海抜10メートルのNYで食べるガパオライスの米は、硬くもなく柔らかくもなく、ほどよく炊けていた。
— 窓際三等兵 (@nekogal21) May 25, 2022
平静を装ってメニューを開くが、値段に目が飛び出そうになる。「最近のアメリカはインフレが凄くてさ。メキシコは物価安くて暮らしやすそう」NY駐妻の余裕を漂わせながら、こちらの心を見透かしたようにエミが話しかけてくる。1mmたりとも羨ましいと思っていないことだけは、はっきりと伝わってくる。
— 窓際三等兵 (@nekogal21) May 25, 2022
同期で丸紅の一般職として入社したエミは内定者時代からライバルだった。立教の放研出身で、フジのアナスクに在籍していたことを鼻にかける立教女学院あがりのお嬢様。学生時代、青学でイベサー運営の傍ら、ひたちなか親善大使として活動してた私と、ありとあらゆる場面で静かに火花を散らしていた。
— 窓際三等兵 (@nekogal21) May 25, 2022
エミと私の競争は、同期で一番のイケメン、慶應義塾体育会ソッカー部キャプテンのケンヤを私が射止めた事で決着がついたはずだった。コンラッドで開いた披露宴、実は内定者時代から付き合ってたと明かした瞬間のエミの呆然とした表情は傑作だった。あんたのLINE、ケンヤはしつこいってウザがってたよ。
— 窓際三等兵 (@nekogal21) May 25, 2022
エミが冴えない風貌の、三角関数が得意そうな経理部の先輩と台場のヒルトンで結婚式を挙げたと聞いた時、何の感想もなかった。その頃、私はタワマン高層階で硬い米から離乳食を作るのに忙しかったから。世界中を股にかける商社マンのケンヤ、最愛の息子。あの時、世界のすべてを手に入れたはずだった。
— 窓際三等兵 (@nekogal21) May 25, 2022
そして7年後。私はメキシコシティの薄い空気を吸いつつトルティーヤをかじり、エミはNYで優雅に暮らしている。「インスタ見たよ、買い出しでNY来てるんだね🇺🇸折角だし会おうよ!」メキシコと違い、物乞いの少年も銃を持った警備員もいない、セントラルパーク脇のお洒落カフェ。標高差でクラクラする。
— 窓際三等兵 (@nekogal21) May 25, 2022
「ケンジ君はもう7歳か、スペイン語も喋れてトリリンガルでしょ、羨ましいなあ」これまた全く羨ましくなさそうにエミが鼻で笑う。息子のケンジはインターに通わせてるが、メキシコ人が7割の学校でお友達とスペイン語ばかり使い、肝心の英語はイマイチだ。財閥系商社と違って学費補助が全額出ないのに。
— 窓際三等兵 (@nekogal21) May 25, 2022
「うちは2人目が産まれたばっかだから手続きが大変で。ほら、アメリカ国籍だし」母親同士の会話に飽きてスペイン語のYouTubeを視聴し始めたケンジに気を取られているうちに、エミの国籍マウンティングが炸裂した。ベビーカーでうたた寝する三角関数2世は、誇らしげに星条旗のおくるみに包まれていた。
— 窓際三等兵 (@nekogal21) May 25, 2022
「この後はブロードウェイ行くんだっけ?私はこっち来た時に観まくって飽きちゃったけど、新鮮な気持ちでミュージカル観れるの羨ましいな」怒涛のマウンティング攻撃に心が折れそうだ。ルチャ・リブレや亀田三兄弟に飽きて、家で桃鉄99年を1人でやりこむ私と果たして同じ星に住んでるのだろうか。
— 窓際三等兵 (@nekogal21) May 25, 2022
「今年の夏休みは家族でカンクン行くつもりだから、もし良かったら会おうよ!」メキシコという括りで軽くまとめられたが、東京の友達に「那覇で会おう!」と言ってるようなものだ。限界途上国に対する先進国の視線が痛い。外に視線を向けると、5thアベニューのトランプタワーがギラギラと光っていた。
— 窓際三等兵 (@nekogal21) May 25, 2022
青学を卒業して総合商社の旦那と結婚。子宝にも恵まれ、私の人生は順風満帆だと信じて疑わなかった。でも、それは大きな勘違いだった。駐妻になっても国によってヒエラルキーがあるなんて、親も先生も人事も教えてくれなかった。ハードシップ手当てなんかいらないから、NYかロンドンに住ませて欲しい。
— 窓際三等兵 (@nekogal21) May 25, 2022
「NYで同期と久々ランチ🍛物価高すぎて早くメキシコに帰りたい🇲🇽」エミと別れ、インスタに投稿。空虚なやりとりの末に生まれる、死んだ感情の残骸をご飯の写真と共に張り付ける作業も疲れた。「次の人事、ブラジルに横移動っぽい!」ケンヤからLINE。そっか、単身赴任頑張って。私は東京で頑張ろう(完
— 窓際三等兵 (@nekogal21) May 25, 2022
作中の「エミ」の視点から見た物語はこちら↓です。是非お読みください。
ツイッター文学「そっか、ようやく帰れるのか。」果てしないマウント合戦はいつ終わるのか・・窓際先生の新作https://t.co/dOinjbH1pp
— 日刊経済ツイ信(経済ツイートまとめ) (@nittsui) May 26, 2022
君たちこんな低俗なTwitter小説読んでる暇あったらブルーピリオド最新刊読んで己の内なる創作意欲と向き合え。若者はとにかく手を動かせ。おじさんはもう手遅れだから、僕と一緒にインターネットでキャッキャウフフしてれば良いんじゃないですかね。https://t.co/7GbDSxRdtn
— 窓際三等兵 (@nekogal21) May 25, 2022
30代位までは、忘れた頃にマウンティングしたくて連絡取ってくる同級生、何人か居ましたわ。次にコチラから連絡すると皆断って来るから気が付いたの…。50代過ぎるとネットのお陰で会うまでの話になりません。…読んでて皆の顔を思い出しました。そろそろ孫自慢かなぁ…。(´・∀・`)
— 古青 (@a_coharu) May 25, 2022
ひたちなか市、青学卒・・・高校は江戸取、竹園、茗渓あたりですかね?(土浦一、水戸一から青学は、少なそう。)
— キャナルサイド (@BaysideInvestor) May 25, 2022
メキシコのインター事情についての部分が的確過ぎてびっくりしてます笑
— なほ (@yakinik_tabetai) May 25, 2022
読んでてめちゃくちゃ面白かったです、次の作品も楽しみに待ってます!
メキシコ5年からNY5年駐在してましたがメキシコシティの方が圧倒的に楽しかったですよ😂
— ちょんくす (@arichonx) May 25, 2022
こんにちは。モンテレイ駐在です。週末は、ラレドまでの買い出しが楽しみです。
— joo (@suzuki89212336) May 25, 2022
ひたちなか親善大使が絶妙でした
— 都の民 (@miyako538) May 25, 2022
現代のサマセット・モームとお見受けいたします
— 田口翔💉💉💉💉💉💉💉 (@HAPPY_and_TURN) May 25, 2022
劣等感感じまくりクリスティーですね
— Godzilla (@Godzilla_Money) May 25, 2022